[お題]シャンプーの香りでタイムトラベル
日常の何気ない習慣が、過去から現在までの記憶を数珠つなぎにしている
かなりお久しぶりの、ぶたひめ様です。
多忙に多忙を重ね、精神的余裕を失ってすらいました。
都会って、怖いですね…
そのあたりのお話は、また後日振り返っていければと思います。
お題テーマに沿って、今回は私の人生初めての海外での思い出を綴っていきます。
人生初の海外は羊とラグビーの国
ギリギリの私が何とか正気を保てた理由、毎日の習慣
その時は、突然に。ある日会社で突然のフラッシュバック
科学的根拠はあるのかよ!
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人生初の海外は羊とラグビーの国
あれはそう、反抗期真っ最中だった...中3の冬だったでしょうか。
世間は、受験だのなんだのでぴりついた雰囲気が漂い始める頃ですが、私は中高一貫校だったため割とのんびりした日々を過ごしていました。
私の通っていた中学校は「修学旅行はニュージーランドでホームステイ!!」が売りの私立中で、それを目当てに受験する生徒も多かったようです。
当の私は全然関係ない理由でしたが。
…小6のころ犬夜叉にどハマリしていたため桔梗みたいに恰好よく弓を引きたくて、県に唯一弓道部のある中学校を受験した…なんて当時の同級生には恥ずかしくて言えなかった。
何やかんや準備して、英語叩き込まれて、真冬に飛行機に乗った思い出があります。
修学旅行の内容は、2週間の単身ホームステイ。平日は地元の小学校に通い、週末はホストファミリーと旅行。最終日にはThankYouパーティー…付け焼刃で身に着けた日本舞踊をみんなでそれっぽく踊ったっけ。
大体そんな感じだったかな。
真冬のど田舎を飛び出し、初めての飛行機、初めての入国審査、初めての外国人…日本語をしゃべらない外国人って、本当に怖い!
空港を出ると、
ムワッと、でもみずみずしいような、はつらつとしたような…何とも言えない私の知らない空気が体に押し寄せる。そのにおいや湿度、質感までもが真新しいもののように感じて、地に足がつかない感じ。…タクシーのオジサンなのに、半ズボン…暑いからかな。あ、でも長ソックス穿いてる…かわいい…
空港からのシャトルバスに乗り込み、訳が分からぬまま現地の小学校へ。
そして、いざ別れの時。見知らぬ長身の白人に抱きしめられ、荷物を奪われ、同胞と引き離され、車に乗せられ…。たぶん、あの数分は、クラスメイトの誰一人言葉を発していなかったと思う。身を寄せ合ってただ震えていた…ような。
普段は偉そうな口ばかりきいてたぶたひめ様も、この時ばかりは、沈黙でした。緊張と恐怖で言葉も出ない。かろうじて発した言葉は「Yes...」のみ。
シートベルトの裏側に縫い付けられた日本語の注意書が偶然目に入り、なぜか思わず涙ぐむ私…。あれは確かホンダ車だった。
いつもツンケン、好き放題できていたのも、結局は大人の後ろ盾があることを知っていて、「どうせ最後は大人が何とかしてくれる」って思っていたからなんだな…って、今になって思います。助けてくれる人が誰もいない、初めてのシチュエーション。怖かった。本当に怖かった。
日本語が使えるのは、学校の休み時間のみ。
朝起きたその瞬間から、英語を話さなければいけない恐怖…というか、「もし聴き取れなかったら、どうしよう」という恐怖の方が強かった気がします。
それでも、徐々にホストファミリーの子供たちと打ち解けていき、いろいろなことを楽しめるようになってきました。
毎朝お父さんがお弁当を作ってくれるのを、少し手伝ってみたり…お父さんは、生の食パンに固いバターを塗るのが上手だったな。私がやると、いつもクズクズになってしまって、「まだまだ子供だね」とか言われたような。
他にも、子供たちとかくれんぼをしたり、裸足でスーパーまでお散歩したり、週末には海岸の別荘へも連れて行ってもらいました。
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ギリギリの私が何とか正気を保てた理由、毎日の習慣
持参していたいつもの制服、いつものバスタオルも、外国産の柔軟剤ですっかりおしゃれな香りになっていました。
些細な事もまともに伝えられない。
毎朝の納豆ご飯も、おみそ汁もない。
自室の壁は鮮やかな緑色で、落ち着かない。
水洗トイレも、洗面所も、水の流れに違和感…落ち着かない。
庭には陽気な犬と、トランポリン…田んぼが見えん。やっぱり落ち着かない。
一秒一秒がすべて真新しく、慣れない。緊張で息が詰まる。
それでも、ほっと気持ちの落ち着く瞬間があったのです。
毎朝のシャワー後、ヘアミルクを付ける瞬間だけは、日本での毎日と同じでした。
私がそのころ好んで使っていたのが、Sa〇aのヘアミルク。
これだけは毎日同じものを使いたい!と、ボトルのふたを厳重にシールして、わざわざ持参しました。
当時は全く自覚がありませんでしたが、無意識下でそのヘアミルクの香りに安心していたような記憶があります。
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その時は、突然に。ある日会社で突然のフラッシュバック
で、まあ、だんだんホストファミリーと打ち解けてきた頃…英語がちゃんと聴こえて、何となく会話が成り立つようになってきた頃。
別れの時が来ました。
お父さんからは、「もったいないね。あと1週間ここにいれば、もっと英語が上達するのにね。」なんて言われながらのお別れでした。
みなさん、3週間です。
個人差はあるかもしれませんが、初めての短期留学は、最低でも3週間は必要だと思います。
1週間目は、英語の波に頭痛と耳鳴り。まずは体を慣れさせる。
2週間目は、勇気を出してしゃべってみる。言葉のキャッチボールがだんだんスムーズになる。
そして3週間目で、ようやっと自分の単語力や聴解力を試せるようになると感じました。
というわけで、私の2回目の短期留学(南アフリカ篇)は3週間でした。
その辺は、また、おいおい。
…そして、何やかんやいろいろあって、大学院終了後は化粧品会社に研究員として勤めることとなりました。
特にその会社が力を入れていたのが、シャンプーやコンディショナーなどのヘアケア商品でした。
新商品の開発にあたって、もしくは剤の研究などのために既存の大手メーカーや有名サロンの商品を対抗商品として設定し、分析を行うんですけど…
年末のある日、過去のサンプルストックを整理していたところ、久々に見つけたのです。Sa〇aを。
高校、大学と進学していく過程で自分の嗜好も変化していき、いつの間にかSa〇a
を使わなくなっていました。
「あ、このボトル懐かしいな。中学校の頃よく使ってたな。」と思いながら、ふたを開けてみると…
ふわっと香ってくる懐かしい香りとともに、あの落ち着かないニュージーランドの自室が目の前に「ぱっ」と広がったのです。
あの鮮やかな緑色の壁も、窓から見えるトランポリンも、犬の鳴き声も、部屋のにおいさえも、とてもリアルに感じられたのです。
…5分くらいが過ぎたころでしょうか、徐々に倉庫のホコリ臭いじめっとした重い空気が私の体にしみこんできました。
十数年越しの、たった数分のタイムスリップ。
その日は、そのあと床に就くまでずっと、あの多感で不安定だった私の、初めての大冒険に思いをはせていました。
皆さんもこんな経験ありますか?
それとも、これって私がヘンなだけ…?
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科学的根拠はあるのかよ!
そこで疑問に思うのが、
「いつものにおいに安心する」とか「におい刺激で過去の記憶がフラッシュバックする」ということに、科学的根拠はあるのか。
神経学的にメカニズムが証明されているのか、ということです。
いや、なんだか、私の疑問をどうやって説明したらいいかわからないですけど…
ニオイ刺激って、過去の色や音の記憶とすごく強いつながりがあるのでしょうか。
脳内で、ニオイの記憶細胞と、色や音の記憶細胞の分布が近いとか?
ちょっと調べてみました。
…ありました!!
これ!
「匂いによるコミュニケーションの世界 : 匂いの動物行動学/小山幸子 著」
によると、”あるに匂いや味刺激によって非常に古い記憶を再認する現象は「ブルースト効果」と呼ばれている”そうです。読み進めていくと…
なるほど、視覚による記憶の方が嗅覚による記憶に比べて短期記憶は得意だけど、長期記憶については、断然嗅覚の方が優れている、と。
そして、それは人間が主に視覚に頼った情報処理やコミュニケーションをとっているから、古い情報が埋もれやすい。一方、嗅覚については、そのときに記憶したにおいとその他の情報がひとくくりに記憶として、長い時間フォルダリングされる…ということだろうか。…違うんかな?なんか、ふわっと分かったような。
それから、こんな研究も。
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press_20140822_03.pdf
これは、東北大学の大学院生命科学研究科 脳機能解析構築学講座からのプレスリリース。
”私たちの脳はポジティブな経験(報酬)やネガティブな経験(罰)をその時の感覚情報と結びつけて記憶する”
…なるほど、これを「連合記憶」と呼ぶらしい。
ショウジョウバエを使った研究では、…あんなちっこいハエの脳を操作するなんて、すごいな…
”色と匂いの連合記憶は同じ回路を使っている” ことが、判明。
また、
”異なる感覚情報の連合記憶は脳の特定の神経回路で一括処理” されているらしい。
なるほど、
少し賢くなったような…。
……みなさん、お気づきですか?
そう、今回は写真、一つも入っていません。
ニュージーランドの写真は、当時インスタントカメラしか持っておらず、現像したものが実家に。
また、何かしら載せます。。。かも。